「働くことの意識」調査(新入社員対象) 

2014年06月26日
日本生産性本部の「職業のあり方研究会」と日本経済青年協議会は、平成 26 年度新入社員 2,203 人を対象にした「働くことの意識」調査結果をとりまとめた。


【調査結果のポイント】

●「人並みか人並み以上か」では、「人並みで十分」が今年度さらに増加(昨年 49.1→52.5%)。「人並み以上に働きたい」(昨年 42.7→40.1%)を大きく上回り、過去最高だったバブル末期と同様の売り手市場時の意識になってきた。

●「どのポストまで昇進したいか」では、昨年度「社長」が過去最低(12.7%)を更新したが、今年度は「専門職<スペシャリスト>」が過去最低(19.9%)を更新した。この 10 年の傾向として昇進志向とスペシャリスト志向双方の弱まりが見られる。

●「この会社でずっと働きたいか」とする回答は、「この会社に定年まで勤めたい」が一昨年度34.3%で過去最高の数値となったが、昨年度は 30.8%に減少し、本年度さらに 28.8%まで減少した。ここしばらく増加していたが、景況感の好転とともに減少に転じている。

●「残業は手当てがもらえるからやってもよい」が急増し、昨年度の 63.0%から 69.4%と過去最高を更新した。昨今のブラック企業・残業未払いのニュースをみて、残業はいとわないがそれに見合った処遇を求めている傾向がうかがえる。

●「デートか残業か」では「残業」(81.3%)、「デート」(18.3%)と、プライベートな生活よりも仕事を優先する傾向が伺えるが、ここ数年は、やや「デート派」が増加(昨年 15.7%)している。

●「第一志望の会社に入れた」は、一昨年度の 60.9%から昨年度 52.0%と大幅に減少し、設問設定以来で最低だったが、本年度は 55.0%とわずかに改善した。


【調査結果】

1.「人並みに働けば十分」が過去最高水準に ~“ほどほど志向”高まる~

その年の新入社員の就職活動が順調であったかどうかで敏感に変化する項目に、「人並み以上に働きたいか」(Q8)がある。景況感や就職活動の厳さによって、「人並み以上」と「人並みで十分」が相反した動きを見せる。特にバブル経済末期の平成2~3年には、「人並み以上」が大きく減り、「人並みで十分」が大きく増えたが、その後の景気低迷にともない平成 12 年以降入れ替わりを繰り返している。ここ数年では、平成 24 年に厳しい就職状況を背景に「人並み以上」が「人並みで十分」を逆転したが、平成 25・26 年度と「人並み以上」が減少(42.7→40.1%)するとともに「人並みで十分」が増加(49.1→52.5%)し、バブル経済末期の平成2~3年に迫る勢いとなり、両者の差も開いている。会社に大きく貢献したいという意欲よりも、“ほどほど”に頑張るという志向が見受けられる。

一方で、「仕事中心か(私)生活中心か」(Q6)という設問では、常に「両立」という回答が多数を占め、今年度も 82.4%と、昨年度の 80.9%よりさらに増加している。残りの「(私)生活中心」と「仕事中心」という回答に注目すると、「(私)生活中心」という回答は平成3年をピークに下がり続け、4年前の平成 22 年に「仕事中心」が「(私)生活中心」を上回ってからその傾向が続いている。

2. 専門職志向は過去最低~昇進志向、スペシャリスト志向とも希薄に~

「どのポストまで昇進したいか」(Q13)という問いに対して、最も多かったのは「専門職<スペシャリスト>」で例年通りだったが、その割合は過去最低を更新し 19.9%だった。一方、新入社員は、社長や役員、管理職を目指す昇進志向でもない。ここ 10 年で最も増えたのは、全体から見ればその割合は多くはないが、主任・班長という回答だった。

<H16 年との比較>
 社長 20%→14% 重役 16%→17% 部長 11%→15% 課長 4%→6%
 係長 1%→2% 主任・班長 5%→10% 専門職<スペシャリスト> 27%→20%
(このほかに 役職に付きたくない 3%→4%、どうでもよい 13%→13%)

3. 「この会社で定年まで働きたい」が減少 ~ここしばらくの流れが反転~

「この会社でずっと働きたいか」(Q18)の設問に対し「この会社で定年まで働きたい」という回答は 28.8%で、「状況次第でかわる」34.5%を2年続けて下回った。平成 12~15 年度以降、「この会社で定年まで働きたい」が増えて「状況次第でかわる」が減る傾向にあり、平成 23 年は「定年まで働きたい」が 33.5%と急増し、「状況次第」を平成 23・24 年度に2年続けて上回った。しかし、その後は景況感の好転とともにこの流れが逆転し、「定年まで働きたい」は一昨年度 34.3%→昨年度 30.8%→今年度 28.8%と減少している。

4.残業は「手当てがもらえるからやってもよい」が急増~残業をしたくないわけではないが見合った処遇を~

「残業についてどう思うか」(Q14)という設問に対し、最も多かったのは今年度も「手当てがもらえるからやってもよい」で、昨年度の 63.0%から 69.4%に急増し過去最高を更新した。昨今の「ブラック企業」などの残業不払いといったニュースを見聞きしている新入社員達が、残業はいとわないが、それに見合った処遇を求めている傾向がうかがえる。

5. デートか残業か ~プライベートより仕事を優先が多数派~

「デートの約束があった時、残業を命じられたら、あなたはどうしますか」(Q15)という質問に対しては、「デートをやめて仕事をする」(81.3%)、「ことわってデートをする」(18.3%)と、全体としてはプライベートな生活よりも仕事を優先する傾向が引き続きうかがえるが、この数年はやや「デート派」が増加している。

6.「第一志望に入社」 ~昨年の過去最低からわずかに改善~

就職氷河期という言葉が定着して久しい。平成 20 年度入社からポスト氷河期に入ったと言われ、平成 21 年度には採用そのものは順調だったものの土壇場になって世界金融危機をきっかけとする経済不安から内定取り消しが出たことが話題となった。そして平成 22 年度、平成 23 年度は採用を絞った企業が多かったため、就職活動は非常に厳しくなった。そこで平成 21 年度から「第一志望の会社に入れたか」(Q33-1)を設問したが、その推移は以下のとおり。

平成 21 年度 62.3(57.2)% 平成 22 年度 55.2(51.8)% 平成 23 年度 56.6(51.5)%
平成 24 年度 60.9(57.3)% 平成 25 年度 52.0(46.3)% 平成 26 年度 55.0(50.1)%
( )は四年制大卒

「第一志望の会社に入れた」という回答は、一昨年 60.9%から昨年 52.0%と大幅に減少し、設問設定以来で最低だったが、本年は 55.0%とわずかに改善された。厚生労働省・文部科学省「大学卒業予定者の就職内定状況調査」によれば、4月1日現在の大卒者の内定率は、平成 23 年に91.0%と過去最低となった後、一昨年 93.6%→昨年 93.9%→今年 94.4%とわずかずつ好転している。

7. 会社の選択理由 ~自分への適性を重視した「職」選び~

「会社を選ぶとき、あなたはどういう要因をもっとも重視しましたか」(Q1)という質問に対して、最も多かった回答は「自分の能力、個性が活かせるから」(31.4%)だった。以下「仕事がおもしろいから」(21.5%)、「福利厚生が充実しているから」(10.2%)、「技術が覚えられるから」(8.9%)が上位を占めた。
なお、「福利厚生が充実しているから」は調査開始以来初めて上位にランクされたが、選択肢の「グラウンドや寮など」という例示を今年から外し施設面以外も含意させたことによる影響と考えられる。

8. 就労意識 ~“感謝される仕事がしたい”が1位~

就労意識について 15 の質問文をあげ、「そう思う」から「そう思わない」まで4段階で聞いた(Q11)ところ、肯定的な回答(「そう思う」と「ややそう思う」の合計)の比率は以下のような順になった。総じてポジティブないし積極的な態度が上位を占め、反対に、ネガティブないし消極的な態度が下位を占める傾向にあった。
なお、今年から新しい設問項目として「できれば地元(自宅から通える所)で働きたい(14)」と「海外の勤務があれば行ってみたい(15)」を追加したところ、肯定的な回答はそれぞれ 64.8%と 46.3%だった。今年度の新入社員の3人に2人は地元志向であり、海外勤務にチャレンジしたい新入社員は2人に1人に達していない。

就労意識のランキング
Q11.仕事についてのあなたの考えや希望についてお聞きします

1 位 社会や人から感謝される仕事がしたい(13) 96.1%
2 位 仕事を通じて人間関係を広げていきたい(7) 95.6
3 位 どこでも通用する専門技術を身につけたい(3) 89.0
4 位 高い役職につくために、少々の苦労はしても頑張る(9) 85.2
5 位 終身雇用ではないので、会社に甘える生活はできない(12) 80.7
6 位 仕事を生きがいとしたい(1) 78.3
7 位 仕事をしていくうえで人間関係に不安を感じる(6) 66.6
8 位 できれば地元(自宅から通える所)で働きたい(14) ・・・新設 64.8
9 位 面白い仕事であれば、収入が少なくても構わない(2) 54.9
10 位 海外の勤務があれば行ってみたい(15) ・・・新設 46.3
11 位 いずれリストラされるのではないかと不安だ(4) 39.8
12 位 職場の上司、同僚が残業でも自分の仕事が終われば帰る(11) 35.1
13 位 仕事はお金を稼ぐための手段であり面白いものではない(8) 32.7
14 位 職場の同僚、上司等とは勤務時間以外つきあいたくない(10) 21.2
15 位 いずれ会社が倒産・破綻するのではないかと不安だ(5) 20.8

9. 生活価値観 ~職場の人間関係への期待や不安も~

一般的な生活価値観について全部で 16 の質問をした(Q30)。四段階のうち「そう思う」「ややそう思う」の合計を順位づけると、おおむね、積極性を示す項目が上位を占め、消極性を示す項目が下位を占めた。
将来への見通しでは「世の中はいろいろな面で今よりもよくなっていくだろう(18)」が一昨年48.2%から昨年 56.5%へ増加し、今年さらに増加して 58.8%になった。「世の中はいろいろな面で今よりも昔のほうがよかった(19)」が一昨年 45.8%から昨年 40.1%に減少し、今年さらに減少して 37.0%となった。
一方で、「人間関係では、先輩と後輩など上下のけじめが大切だ(14)」が1位となったが、前出の就労意識(Q11)でも「仕事を通じて人間関係を広げていきたい(7)」(95.6%)、「仕事をしていくうえで人間関係に不安を感じる(6)」(66.6%)といった結果があり、新入社員にとって職場の人間関係への期待や不安が見てとれる。

重視する就労意識のランキング
Q30.あなたのいろいろな考え方や経験についてお尋ねします

1 位 人間関係では、先輩と後輩など上下のけじめが大切だ(14) 91.3%
2 位 将来の幸福のためには今は我慢が必要だ(22) 84.6
3 位 明るい気持ちで積極的に行動すれば、たいていはできる(13) 82.7
4 位 他人にどう思われようとも自分らしく生きたい(23) 81.2
5 位 自分はいい時代に生まれたと思う(20) 75.5
6 位 すこし無理だと思われるくらいの目標をたてた方ががんばれる(12) 74.3
7 位 あまり収入がよくなくても、やりがいのある仕事がしたい(16) 62.9
8 位 冒険をして大きな失敗をするよりも堅実な生き方をしたい(21) 61.9
9 位 たとえ経済的に恵まれなくても気ままに楽しく暮らす方がいい(15) 61.1
10 位 世の中は、いろいろな面で今よりもよくなっていくだろう(18) 58.8
11 位 企業は経済的な利益よりも、環境保全を優先するべきだ(17) 57.9
12 位 世の中、なにはともあれ目立った方が得だ(10) 49.9
13 位 リーダーになって苦労するよりは人にしたがっている方がいい(11) 48.7
14 位 自分と意見のあわない人とはあまりつきあいたくない(9) 48.2
15 位 周囲の人と違うことはあまりしたくない(8) 43.9
16 位 世の中は、いろいろな面で今より昔の方がよかった(19) 37.0


【調査概要】
・調査期間:平成 26 年3月 10 日から4月 25 日
・調査対象:平成 26 年度新社会人研修村(国立オリンピック記念青少年総合センター)に参加した企業の新入社員
・調査方法:同研修村入所の際に各企業担当者を通じて調査票を配布し、その場で調査対象者に回答してもらった。
・有効回収数:2,203 人

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[日本生産性本部]
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