消費税率引き上げと円安が旅行に与える影響についての調査 〜1年前の調査からの意識の変化をみる〜 

2014年03月12日
JTB総合研究所は、「消費税率引き上げと円安が旅行に与える影響についての調査」を実施。
本調査は、4月の消費税率引き上げ(消費増税)による生活全般に対する意識や今後の旅行・レジャーへの影響について調査したもの。2013 年3 月に同様の調査を実施しましたが(ジェイティービーより発表)、当時と概ね同じ人を対象に行い、意識の変化もみています。

【調査結果】

4.今欲しいものは 「国内旅行」「海外旅行」。所得が上がった分は「貯金」に使いたいが1 位。

回答者が「今」何が欲しいかを選択肢から選んだ結果。
過去4年の旅行経験者への調査ではありますが、前回調査同様、物品でないものが上位のほとんどを占める結果となりました。1 位は「国内旅行(72.9%)」、2 位は「海外旅行(56.0%)」で、前回調査より国内旅行が5.2 ポイント、海外旅行が2.3 ポイント増えています。また、「有名レストランや割烹などでの外食(27.9%)」が前回調査より3.7 ポイント増えています。
「観劇、観戦、ライブコンサート(27.5%)」、「人間ドッグや歯科検診など健康維持(26.0%)」「整体やスポーツクラブなど健康維持(24.4%)」は前回調査とほぼ同じ結果でした。
物品では「洋服、衣服、靴、ファッション関連(32.3%)」、「パソコン(28.3%)」などが上位となりました。家電製品や車などはエコポイント制度やテレビの地デジ切り替えが終了し、需要が一巡したせいか、特に多い物品は見当たらず、それぞれ個人の買い替え事情に合う商品が挙げられています。この傾向も前回調査から変わっていません。
年代別にみると、20 代では他の年代に比べてファッション関連や鞄、小物などが高い傾向が見られましたが、1位と2位は他の年代同様に、国内旅行、海外旅行となりました。

なお、今回新たに、「所得が上がった分を、何に使いたいと思いますか。」という質問をしました。
将来への生活への不安が高いせいか、「貯金」(43.8%)がやはり最も多かったのですが、続いて多かったのが「国内旅行(37.2%)」「海外旅行(27.0%)」でした。

5. 4 月の消費増税前に購入しようと思うものは「特になし」。次いで「国内旅行」、「海外旅行」

消費税5%から8%への引き上げが予定されている4 月までに購入(利用)しようと思うものを聞きました(*1)。
回答者の52.6%は「特になし」を選んでおり、税率が上がる前に特に買っておきたいものがないという人が多いことが分かります。増税前までに購入(利用)したいものの上位には「国内旅行(19.8%)」、「海外旅行(11.8%)」、「洋服、衣服、靴、ファッション関連(11.3%)」があげられています。なお、図には明示していませんが、前回調査では、1 位「特になし(50.8%)」、2 位「国内旅行(16.4%)」は今回と同様でしたが、第3 位に「パソコン(11.3%)」、第4 位に「冷蔵庫、洗濯機、掃除機など一般の家電製品(11.0%)」があがっていました。

今回新たに、「消費税が上がる前に、既に購入(利用)したものはありますか?」「減税措置などで消費税が上がった後の方がかえって安くなるため、購入(利用)を待っているものはありますか?」という質問をしましたが、「特になし」が前者は63.7%、後者は77.4%と圧倒的に多い結果となりました。なお、既に購入したものでは、「国内旅行(10.4%)」と「パソコン(8.7%)」が比較的高い結果となりました。
(*1)海外旅行は海外の消費なので、国内移動など国内消費分を除き国内消費税はかかりません。

6.消費増税後の生活への影響:「普段の消費を少し節約して、欲しいものは今まで通りに購入する」が49.6%

消費増税後の生活への影響については、「引き上げ後の生活が心配」が44.4%と前回調査から4.9 ポイント減少しました。また、「影響はあるが、引き上げ後の生活と今の生活にさほどの違いはない」は微増の43.7%、「少し窮屈だが、特に大きな変化はないと思う」は昨年と同率の45.0%でした。消費増税後の生活を懸念する人の割合は増えてはいないようです。
また、「普段の消費を少し節約して、欲しいものは今まで通りに購入する」という回答が49.6%あり、欲しい物の消費は削りたくないという意識が強く現れています。これも前回調査(51.5%)と大きく変わっていません。
一方、前回調査から大きくポイントが減少したのは「普段の生活は変わらないが、将来が不安なので貯蓄を殖やす」(前回47.0%→今回38.3%)でした。「趣味や旅行など、必要性の低い消費を少し削らなければならないと思う」も5.3 ポイント減少しました。これらは、消費増税を目前に控え、増税後の生活が現実味を帯び、心理的に冷静になっていることの表れとも考えられます。また企業業績の改善やベアアップの報道で心理的にも、1年前の消費増税に対する漠然とした不安感が薄れつつあるのではないでしょうか。

具体的に「節約したいもの」「できれば節約したくないもの」。
節約したいものは、「光熱費(68.3%)」「外食代(51.5%)」「ガソリン代(47.3%)」に続き、「ファッション代(46.6%)」と日常の生活に関わる内容が続きました。
節約したくないものでは、「国内旅行(37.6%)」「日常の食料品・食費(30.2%)」「海外旅行(26.0%)」「自分の趣味のための費用(25.9%)」「子供や孫の教育費(24.8%)」などが上位を占めています。
いずれも、前回調査と順位は同じです。

7.消費増税の影響が戻ると予想する時期は「夏ごろ」(23.5%)、「秋~冬ごろ」(15.8%)

消費増税が生活に与える影響がいつごろ元に戻りそうかを聞いたところ、「今年の夏ごろ」が23.5%、「今年の秋~冬ごろ」が15.8%と、39.3%の回答者は年内にある程度元に戻ると予想しています。消費増税後の消費の冷え込みは懸念されますが、駆け込み需要も今のところそれほど大きな動きが見られないことから、夏ごろから徐々に回復に向かうことが期待されます。

8.消費増税後、国内旅行は「旅行回数を少なくする」が48.8%。旅先での出費を控えるは1年前より減少の29.6%

「消費増税によって、国内旅行の際に、実際にどのような行動をするのか」聞いた。
「旅行回数を少なくする」が48.8%と前回(49.5%)同様トップでしたが、「旅先での出費を控える」(前回35.5%→今回29.6%)、「商品の比較に時間をかける」(前回30.0%→今回24.7%)、「宿泊施設のレベルを下げる」(前回28.6%→今回23.5%)、「旅行方面を近い場所にする」(前回24.8%→今回20.4%)と、いずれも前回調査時よりポイントが下がりました。

9.最近の円安傾向と海外旅行への影響

2012 年は円高の影響もあり、アジアを中心に海外旅行者数は伸長し、1,849 万人と過去最高を記録しましたが、一昨年末以降円安傾向に転じて2013 年3 月時点で1 ドル95 円前後となり、海外旅行者数の伸びにブレーキがかかり、2013年は1,747 万人と大きく減少しました。現在は1 ドル105 円前後で推移していますが、この円安傾向は、海外旅行者にとってどのような影響を与えるのでしょうか。

訪問する国の為替レートが海外旅行に影響すると回答した人の、具体的な影響を聞いた結果が図16 です。全体では、「海外旅行をする回数を減らそうと思う(39.5%)」「ショッピングやみやげの費用を減らそうと思う(33.7%)」「1 回の海外旅行で使う費用を減らそうと思う(33.2%)」「訪問先で使う費用を減らそうと思う(24.8%)」と続きます。
但し、海外旅行経験回数が多い人ほど、「海外旅行をする回数を減らそうと思う」が減り、「ショッピングやみやげの費用を減らそうと思う」「1 回の海外旅行で使う費用を減らそうと思う」「訪問先で使う費用を減らそうと思う」が概ね増えています。
海外旅行に対しては、現地での消費を抑えてでも行くことに意義を感じている点が、日常生活における節約と似ているとも言えそうです。

10.海外旅行をする場合にどのような旅行をするか「フリータイプのパッケージツアー」が4.4 ポイント増加

海外旅行をするときに何が大きく影響するかを聞いたところ、複数回答では「訪問する国の通貨の為替レート」が45.2%を占めていますが、単一回答では9.8%となり、むしろ「自分の休暇や休みの取得(11.2%)」「収入や月給、ボーナスの額(10.7%)」「パッケージツアーの料金(10.1%)」「家族や同行者の休みの取得、スケジュール合わせ(9.9%)」による影響が大きいことが分かります。 なお、前回調査と比べて大きな変化はありません。

海外旅行する場合にどのような旅行をするか聞いた結果。
「フリータイプのパッケージ旅行」が前回調査から4.4 ポイント増えて35.2%、「航空券とホテルを手配」が3.6 ポイント減って32.8%となり、パッケージ旅行の比率が上がりトップとなりました。

11.まとめ

いよいよ4月に消費増税が迫ってきましたが、本調査では、駆け込みで買い物しようとか、逆に、増税後の減税措置を待って買い物をしようという人は多くなく、欲しいものを今まで通り購入するという人が約半数を占める結果となりました。

また、前回調査同様、欲しいのは「モノ」ではなく、旅行や趣味などの「コト」が上位を占めています。また、所得が上がった分を使いたいこととして、貯金を除く「消費」の中では国内旅行、海外旅行が1位、2位を占めました。

為替レートに関しては、前回調査時(2013 年3 月)1ドル95 円前後だったものが、現在は1ドル105 円前後で推移しています。「円安がもっと進むことを望む人」は20.2%と、前回調査より減少しています。円安が食料品など日常必需品の値上げに繋がっていることも背景にあると考えられます

2013 年以降、日本人の海外旅行者数は円安や国際情勢の影響を受け、減少傾向にあります。しかしながら、今回の調査結果より、海外旅行への潜在的な意向は強いことが明らかとなりました。海外旅行を取り巻く環境としても2012 年に次いで海外旅行者の多かった2000 年に比べるとまだまだ円高基調ですし、インターネットの普及で旅行商品の比較が容易となり、航空運賃も当時より遙かに自由な設定が可能です。格安なLCC の運航も増えて、消費者の選択肢は当時より大きく広がっています。そのため、いろいろと工夫し1 回あたりの旅行費用をうまく抑えて海外旅行の回数は減らさない傾向があるようです。

消費増税、円安による影響はない訳ではありませんが、「モノ」より心を豊かにする「コト」に対する欲求は衰えていないのではないでしょうか。


【調査方法】
・調査実施期間: 2014 年2 月5 日~10 日
・調査対象: 首都圏(東京、神奈川、埼玉、千葉)、中京圏(愛知、三重、岐阜)、関西圏(京都、大阪、兵庫、奈良)在住の男女、合計1260 人。抽出方法は下記の通りです。
(1)2013 年3 月に実施した調査の回答者。
 2010 年1 月以降に、観光目的で、①海外旅行に行った人 ②海外旅行に行かず、国内旅行に行った人
(2)今回(1)で不足した回答者の補充として、
 2011 年1月以降に、観光目的で ①海外旅行に行った人 ②海外旅行に行かず、国内旅行に行った人
 なお、今回の調査では2013 年3 月の調査の回答者の920 名が回答、340 名が補充した回答者であった。・調査方法: インターネット調査

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