2013年度 国内・海外出張旅費調査 

2013年11月19日
産労総合研究所が発行する定期刊行誌「労務事情」は、本年7月に、これまでほぼ3年おきに実施してきた「国内・海外出張旅費調査」を実施した。

【調査結果のポイント】

(1)国内宿泊出張における日当の支給状況
 ・規模、業種を問わず、9割以上が日当を支給。大半が「一律同額」

(2)国内宿泊出張の場合の日当、宿泊料
 ・役職別にみた日当の平均額は、社長4,892円、部長2,944円、一般2,410円
 ・宿泊料の上限は、社長16,276円、部長10,961円、一般社員9,840円

(3)役職別にみた新幹線グリーン車の利用許可状況
 ・何らかの形でグリーン車利用を認める割合は、役員54.5%、部長26.0%、課長19.0%で、いずれも前回調査より増加

(4)海外出張における地域別の日当、宿泊料
 ・円建て企業では、課長クラスで日当5,000円台、宿泊料13,000円台から15,000円台

(5)海外旅行傷害保険の付保(加入)状況
 ・4社に3社が、海外出張する社員に海外旅行傷害保険を付保

(6)役職別にみた傷害保険の平均付保金額
 ・死亡・後遺障害の場合の保険金は、役員クラスが7,000万円強、部・課長クラスが6,000万円弱で、前回調査から大幅に増額

(7)不測時の安否確認・緊急連絡体制の構築
 ・海外出張時の安否確認・緊急連絡の手段は「携帯電話」が半数(複数回答)

(8)国内・海外出張旅費の削減策
 ・出張旅費の削減策は、国内出張では「テレビ会議やウェブツールによる代替」、海外出張では「ディスカウントチケットや旅行パックの利用」がトップに(複数回答)

【調査結果】

(1)国内宿泊出張における日当の支給状況
規模、業種を問わず、9割以上が日当を支給。大半が「一律同額」


まず、国内出張に関する調査結果を紹介する。国内の宿泊出張の場合、日当と宿泊料が支給されることが多い。企業によってはこの他に食事代を支給するところもあり、また日当に宿泊料を含めるケースもある。本調査結果によれば、早朝出発や時間外(深夜)帰着などを除く通常の宿泊出張について、日当を「支給している」企業は全体の92.9%。「支給しない」と答えた企業は4.1%にとどまった。企業の規模や業種を問わず、同様の結果となった。
支給方法については、地域等による区分を設けず「一律同額」とする企業が78.3%と大半を占めた。一律同額の割合は規模の大きさに比例しており、大企業(1,000人以上)では約9割となっている。

(2)国内宿泊出張の場合の日当、宿泊料
役職別にみた日当の平均額は、社長4,892円、部長2,944円、一般2,410円
宿泊料の上限は、社長16,276円、部長10,961円、一般社員9,840円


国内宿泊出張の日当額(一律同額の場合)を役職別にみると、図表2-1のようになる。これを、一般社員を100とした指数でみると、部長122、取締役156、社長203などとなっている。一方、宿泊料については、地域間で金額に差がある場合の最高地の支給額をみたものが図表2-2である。指数でみると、一般社員100に対し、部長111、取締役130、社長165などとなり、日当に比べると役職による金額差は小さい。なお、宿泊料の支給方法に関しては、「定額払い」59.8%、「実費支給」10.7%、「一定額を上限にした実費支給」26.6%などとなっている。

(3)役職別にみた新幹線グリーン車の利用許可状況
何らかの形でグリーン車利用を認める割合は、役員54.5%、部長26.0%、課長19.0%で、いずれも前回調査より増加


アベノミクスによる経営環境の改善が進んでいるが、近年の経費節減強化の流れに変化はみられるのだろうか。
本調査では、継続的に国内出張時の新幹線グリーン車の利用許可状況について調べている。今回の調査では、「何らかの形で利用を認めている」(「認める」+「条件付きで認める」)割合は、役員(平取締役)で54.5%、部長クラスで26.0%、課長クラスで19.0%となった。
「何らかの形で認める」割合は以前から漸減傾向にあったものの、2008年度まではおおむね役員で6割前後、部長クラスで3割前後にとどまっていた。それが東日本大震災後の2011年度調査時に大きく落ち込み、今回調査で再び上向いてきたという結果になっている。

(4)海外出張における地域別の日当、宿泊料
円建て企業では、課長クラスで日当5,000円台、宿泊料13,000円台から15,000円台


まず、海外出張における日当、宿泊費等を、どの国の通貨で支給しているかをたずねると、「円建て」52.1%、「ドル建て」25.4%、「各国通貨」7.7%などとなった。このうち、円建て企業について、地域別に日当および宿泊料(定額支給の場合)の平均額をみたものが図表4である。棒グラフは地域ごとに、上から役員(平取締役)クラス、課長クラス、一般社員の平均額を表している。例えば、東南アジア地域では、役員クラスで日当7,054円、宿泊料16,074円、課長クラスで同5,137円、13,248円、一般社員で同4,543円、12,127円であった。

(5)海外旅行傷害保険の付保(加入)状況
4社に3社が、海外出張する社員に海外旅行傷害保険を付保


社員の海外出張中の病気や負傷に備えて、海外旅行傷害保険に加入している企業の割合は全体の75.7%。大企業では8割を超える結果となった。業種別にみると、製造業の91.4%に対し、非製造業は64.6%とやや低い。付保する項目としては、「傷害」、「疾病」が8割前後。次いで「携行品損害」、「救援者費用」、「賠償責任」がそれぞれ5割前後となっている。

(6)役職別にみた傷害保険の平均付保金額
死亡・後遺障害の場合の保険金は、役員クラスが7,000万円強、部・課長クラスが6,000万円弱で、前回調査から大幅に増額


海外旅行傷害保険は、付保金額が傷害と疾病とに区分され、設定されている。このうち、傷害に対する治療費および死亡・後遺障害の付保金額(7泊8日程度の場合)をみたものが図表6である。いずれの役職区分でも、前回2011年調査に比べて、相当に金額水準が上がっている。海外出張・駐在のリスクに対する認識が高まってきている証左だろうか。ただし、全体的に、大企業(1,000人以上)および中堅企業(300~999人)と中小企業(299人以下)とで、保険金額にかなりの開きがある点に注意が必要である。

なお、風土病や紛争・テロ等の危険度の高い国・地域に出張する場合に特別な保険を付保しているかについては、特別な保険を「付保している」と回答した企業は3.0%(前回調査4.0%)とごく一部であり、大半(75.7%)が「付保していない」と答えている。

(7)不測時の安否確認・緊急連絡体制の構築
海外出張時の安否確認・緊急連絡の手段は「携帯電話」が半数(複数回答)


海外出張時には、災害や紛争に巻き込まれる可能性もある。本年1月、アルジェリアで発生したガス・パイプライン襲撃事件は記憶に新しい。不測時の安否確認・緊急連絡体制については、「携帯電話を会社負担で携行」が49.1%で最も多く、次いで「社内イントラネットによる緊急連絡体制整備」11.2%。「民間の危機管理サービスを会社負担で利用」は3.6%にとどまっている。
なお、危険地域への出張時に「日当とは別に危険手当を支給している」企業は3.6%、「日当を増額している」は0.6%であり、「特に対応していない」が80.5%であった。

(8)国内・海外出張旅費の削減策
出張旅費の削減策は、国内出張では「テレビ会議やウェブツールによる代替」、海外出張では「ディスカウントチケットや旅行パックの利用」がトップに(複数回答)


最後に、出張旅費の削減策について聞くと、国内出張に関しては、「テレビ会議やウェブツールによる代替」36.7%が最も多くなり、次いで、「ディスカウントチケットや旅行パックの利用」33.7%、「出張回数・人数の削減」28.4%などとなっている。一方、海外出張に関しては、「ディスカウントチケットや旅行パックの利用」36.7%が最多となり、「会社による一括管理(予約・手配等)」30.2%、「ビジネスクラスの利用制限」23.7%などの順になっている。


【調査概要】
調査対象:当社の会員企業および上場企業約3,000社
調査時期:2013年7月
集計対象:締切日までに回答のあった169社

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[産労総合研究所]
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